名盤ライブ 第3弾 渡辺美里85年の1stアルバム 『eyes』
大学2年のとき,友人から妙なことを頼まれた。
「レコードを買ったんだけど,うちにはプレーヤーがない。レコードを貸すからカセットテープに録音してほしい。」
ぼくは,アルバイトで稼いだお金で一通りのオーディオセットを持っていた。そのことを知っての依頼だった。
大学の近くの川沿いのアパート。ぼくの家から,電車通りを渡って小さな商店街のある小道を抜けて,およそ5分。
彼の家に遊びに行くと,このレコードが,居間のローボードの上に立てかけてあった。沢口靖子主演のドラマの主題歌「My Revolution」が流行り始めの頃だった。しかし,そのアルバムには「My Revolution」は入っていなかった。どうやらデビュー・アルバムらしい。それが,このレコード,そして渡辺美里との出会いだった。
佐野元春「SOMEDAY」,GRAPEVINE「Lifetime」に続く第3弾。
この選択は,悪くない。
一応補足しとくと,過去の名盤をライブで再現しちゃおうという企画。
渡辺美里は,決して歌がうまいアーティストではない。
(あ,まあ若いころは声量はあったのだと思うが。。。)
作詞作曲をして,音楽で自分のメッセージを伝えるアーティストではない。
(あ,でも途中から作詞はしてたような。。。)
ルックスを売りにするアイドルでもない。
しかし,それでも,このアルバムとセカンドの「Lovin' you」は,名盤だと個人的に思っている。
楽曲は,当時絶大な人気を誇った大江千里,小室哲哉に加え,白井貴子やデビュー前の岡村靖幸を起用。当時,大江千里作詞作曲の「悲しいボーイフレンド」を聞いて,今で言うキュンキュンするような気持ちになったもんだ。
渡辺美里ボーカルは,力強く,そして少し走り気味で不安定。しかし,そのことがアルバム全体に絶妙なライブ感をもたらしている。
今聞くとややノスタルジックな感じがするのは,80年代の日本経済を象徴するような綺羅びやかな音作りのせいだ。
「10代の女の子の輝き」
陳腐な言い方だが,それを象徴するような一枚。
蛇足だが,録音を頼んだ彼はそもそも音楽を積極的に聴くタイプではなく,なんで渡辺美里?と思っていた。
どうやら,彼は大学1年のときから同棲していたらしく,4年生のとき,今で言うできちゃった結婚をして,卒業するときは子どもがいた。(笑)
渡辺美里のレコードを購入したのも,当時の彼女,今の奥さんだということが,かなり後になって判明する。